「梅雨時の雨の降り方が変わった」は本当か?

今年も、7月に入り熱海の土石流を始めとする水害により大きな被害が出てしまいました。毎年のように梅雨の後半には、日本のどこかで水害がおきてしまうことが常態化しており、地球温暖化の影響をいやでも体感するようになりました。あるニュース番組で、コメンテーターが、「昔の梅雨はしとしとと雨が降ったが、今の梅雨はごうごうと降る」と言っていました。聞いたときになるほどと思いましたが、果たして本当にそうなのか?気になったので調べてみることにしまました。気象データの何をどう調べたら、「しとしとからごうごう」への変化を証明できるのかと考え、過去60年の梅雨の時期の日毎降水量がどのようになっているのかを調べてみました。データの引用元は、「気象庁の過去の天気」サイトからです。

左の表は5年おきに書きだした東京都の東京地点における6月20日から7月20日までの日毎の降水量の一覧表です。色付けした日は10mm以上の雨が降った日で、色が濃くなるほど雨の量が多いことを表しています。目を細めて全体を見渡してもらうと、その年において一定量の雨が降った日の多寡がわかると思いますが、年ごとのばらつきが大きすぎて特定の傾向があるようには見えません。ただし、今年に限って言えば、6月末から7月初めにかけて、集中的に雨が降っており、これだけのまとまった豪雨は、これまでに見られなかったものでした。

右に各年の梅雨時期の合計降水量をグラフで示しましたが、ここでも年ごとの変動が大きすぎて傾向を議論することはできません。昔に比べて梅雨時の降水量が多くなったとは必ずしも言えないと思います。

もっと他の場所も調べればよいのですが、少々手間がかかりますので、次は安直な方法で調べました。気象庁のサイトには歴代20傑というのがあり、降水量の歴代20傑を、10分間、1時間、1日という単位で書き出し、それがこの10年間にどのくらい記録されているか調べてみました。

これも字が小さくて、申し訳ありませんが左から10分あたり、1時間あたり、1日あたり雨量の歴代20傑です。記録された日付のうち、2011年以降を薄茶色に、2021年の日付を黄色で色付けしています。

1時間で30mmの雨といえばバケツをひっくり返したようなという表現が使われますが、10分間に30mmも降ったケースが20回以上ありました。また1時間あたりでは113mm以上降ったケースが20回、1日あたりで495mm以上が20回というとんでもない量の雨が記録されています。7月の平年雨量は200-300mm程度でしょうから1時間でその半分近く、1日ではその倍以上という豪雨が20回以上あったということになります。

淡々と見ると、どうでしょうか?1日あたりを除き、必ずしも近年に多く記録されているわけでもないように思います。この1日あたりではこの20傑の中に2011年7月19日という日付が7回もあります。平成23年の台風6号です。徳島に上陸し、各地に記録的な豪雨をもたらしました。この台風6号を除けば、最近10年の記録がさほど多いわけではないように思います。

今日の話は、梅雨の雨が「しとしとからごうごう」へ変わったのか?というところからスタートしていますが、この答としては、調べた範囲では明確な傾向は認められなかったということになります。期待させてすみません。

最後にひとつおまけで調べたことをご紹介します。それは、熱海の伊豆山の土石流について、伊豆山地区の雨はそれほどひどかったのか?ということです。実は伊豆山にはアメダスの観測器が設置されているのですが、データが提供されていませんでした。そこで、伊豆半島と湘南地区の降水量を土石流の起きた7月3日を含む前5日間について一覧表にしてみました。伊豆山最寄りは網代になります。

伊豆山と網代ではかなり距離があるので、この比較に意味があるのかどうかは議論のあるとこおころでしょうが、少なくとも網代の5日間の降水量については、他の地点よりも際立って多いとは言えないということはできます。色付けした部分は、黄色で示した網代に比べて降水量が多かった日を表しています。網代よりも降水量の多かった場所はかなりありますが、いずれも大きな土砂災害は起きていません。

1時間あたり50mm、1日あたり200mmを超える降水量が、土砂災害の危険の目安と言われています。この表で濃い色で色付けした日は、1日あたり200mmを超えた日ですが、網代ではそのような日がありませんでした。

伊豆山と網代の降水量があまり差がなかったという前提の話ですが、伊豆山の土石流は降水量が特に多かったということではなく、地形的要因を含めた他の要因の影響が大きかったと思われます。そしてこの他の要因の中には、再三報道されている盛り土も大きな要因として当然含まれます。