お電話でのお問合せはこちら
TEL:03-3443-4011

かんとこうブログ

2024.04.22

為替が貿易収支、経常収支に及ぼす影響・・過去の統計から

円安が止まりません。日銀によるゼロ金利政策の見直し発表により円高に振れると期待されたにも拘らず、むしろ円安方向に進んでいます。私は経済の素人ですので、専門的な解説などできませんが過去の諸データから為替レートと貿易関係数値の関係について考察することはできますので、過去のデータを調べてみました。調べたのは輸出金額、輸入金額。貿易収支、経常収支、為替レートです。

理論的に「為替レート」と「経常収支」の間には、「経常収支」の黒字が大きいほどその国の通貨は通貨高になる「国政収支説」というのがあるそうです。経常収支というのは、貿易収支に所得収支、経常移転収支を合計したものであると説明されています。(下図:海外投資データバンク:下記URL)より

http://www.world401.com/kawase/keijyo_syusi.html 

   

貿易収支」はものやサービスの輸出金額から輸入金額を差し引いたもの、「所得収支」は日本企業が海外(現地法人)で稼いだ金額がプラス、逆に外国企業が日本で稼いだ金額をマイナスして合算したもの、「経常移転収支」はODAなど海外への資金援助や、国連やIMFなど国際機関への拠出金など、また外国人労働者の本国への送金などです。これらの合計が経常収支であり、経常収支が黒字であるとその国の通貨は通貨高になるということだそうです。

早速これらの金額の推移を調べてみました。いつもお世話になっている「世界経済のネタ帳」から、1980年以降のデータを引用して作図しました。結果は下図です。

金額の単位は10億ドルです。経常収支は上の段の右端にありますが、なんとずっと黒字が続いています。貿易収支はこのところ赤字になっていますが、それを補ってあまりある所得収支の黒字があるようです。となると常に円高方向へ圧力がかかっていたということになります。念のため、為替レートと輸出入金額、貿易収支顎、経常収支顎の散布図を作成してみました。

1980年代の前半は為替レートが1$=200円を超えたりしていましたので、データが孤立しているものが多かったので、為替が落ちついてきた1988年以降でもう一度為替レートと輸出入金額、貿易収支顎、経常収支顎の散布図を作成してみました。

少しは散布の範囲がまとまった図になりましたが、それでも有意の相関は見いだせませんでした。輸入金額、輸出金額が円安になると金額が低下する傾向にありますが、これは金額の単位がUS$であるためと思われます。結論として年次のデータで見る限り、経常収支等の為替への影響は確認できなかったということになります。

そこでもう一度令和3年以降における月次の推移で細かい動きへの影響を見てみました。つまり年次ではスパンが長すぎてわからないのではないかと考えたわけです。この間の国際収支関係の数値の推移と為替レートの推移は下図のようになりました。

今度は金額は日本円に換算されています。しかし、やはり為替レートと密接な関係があるようには見えません。散布図もさきほどと同様に輸出金額、輸入金額に対しては、円安ドル高になるにつれ金額(円ベース)が上昇するという傾向以外は関連は見いだせませんでした。ドル高になれば円ベースの輸出入金額があがるのは当然なことです。

以上過去のデータを見てきましたが、円安になり1$=150円を超えたからと言って経常収支や貿易収支に大きな影響がでるようにも思えません。しかしながら、ドルがあがれば輸入品価格は上がるでしょうから国民生活には影響がでることは確実です。輸入品の価格高騰に対する対策と国際収支への対策はわけて考えてもよいのかもしれません。

コメント

コメントフォーム

To top