朝日新聞の記事をもとにした人の流れと感染者数に関する考察

5月29日の朝日新聞の朝刊に、人の流れと新規感染者数の関係についての記事が掲載されています。人の流れはアグープのデータ提供をもとに東京の14か所の駅周辺の一日あたりの人出(百万人/日)の1週間の平均値、新規感染者数は東京都の1週間の平均値(人/日)です。期間は第1次緊急事態宣言が発出された昨年の4月から今年の5月までのデータが対比されています。下のグラフが朝日新聞のグラフを再現したものです。記事を写真にとり拡大して印刷し、位置を計測して計算し再現しました。大筋あっていると思います。

朝日新聞は、このグラフについて「緊急事態宣言が発出されると2週間後に感染者数が減少し始める」と解説しています。確かに昨年4月、今年1月、4月の人の流れの大きな減少のあと、少しして感染者が減少し始めています。ただし問題なのは、いずれの場合も人の流れの減少はそのあと継続できず、次第に元に戻りいつの間にか感染者が増加に転じてしまっていることです。となると気になるのは、どのくらい人の流れが減れば感染者が減少し、どのくらい人の流れが増加すれば感染者増加に転じるのかということです。そこで、この朝日新聞のグラフのデータを使ってこの点を調べてみました。

人の流れと新規感染者数について、前週からの増減をグラフ化してみました。さらに同じことを人の流れのデータを2週間後ろにもっていってみました。

左がそのまま増減をグラフ化したもの、右が人の流れのデータを2週間後ろへ移動させたものです。棒グラフが新規感染者の増減(ピンクが増加、濃青が減少)、折れ線が人の流れの増減です。この1年あまりの期間で、新規感染者が減少した期間は4回ありました。第1次緊急事態宣言後(2020年4月)、第2波後(2020年8月)、第2時緊急事態宣言後(2021年1月)、第3次緊急事態宣言(2021年4月)これらの期間では、いずれも国民の警戒感の高まりから人の流れが前の週よりも減少していることが見て取れます。(左のグラフの楕円で囲んだ部分)

人の流れを2週間後ろのずらして右の図では、人の流れの増減と新規感染者数の増減がさらによく一致することがわかります。(赤い矢印部分)右の図は明らかに人の流れが減少するとその2週間後には新規感染者数が減少することを示しているのです。それでは次は、同じことを増減率についてやってみましょう。

先ほどの増減のグラフと同じ形で、増減率について図示しています。先ほど述べたように新規感染者数が連続して減少した期間は、4回しかありませんでした。右の図の矢印部分です。このうち前の週に比べ30%以上人の流れが減少した週がありました。したがって新規感染者減少の条件としては、人流が前の週から30%以上減少することを挙げてもよいと思います。残りの1回は昨年の8月ですが、この時もW字型の人流のおちこみがみられています。このことから2つ目の条件としては、複数週にわたり人流の減少があることを挙げてもよいのではないかと思います。

本来は、基準となるべきは平常時の人出であり、そこから何%減少したかという数字で議論すべきだと思いますが、あいにく、そうした数字を手元に持ち合わせていません。どうしてこのようなことに拘るかといえば、政府や東京都の外出や出勤自粛の呼びかけがあまりにもむなしく聞こえるからです。上で見てきたように、前の週から30%以上人流を減らせれば、2週間後には新規感染者が減少するのであれば、そのように具体的な数字をもって呼びかければよいのではないかと思うからです。いまだにリモートワーク7割など到底実現不能の数字を言われても、だれしも他人事としか聞かないであろうことは容易に想像できます。

データはたくさんあるのですから、専門家の力を借りて解析した結果をもとに、もっと国民の心に響く訴求ができないのかもどかしくてなりません。