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かんとこうブログ

2024.03.14

IEAの「二酸化炭素排出量2023」報告書 その3

昨日は第4章で先進国の排出状況を、第5章で代表的な新興国の排出状況を見てきました。今日は第6章において、そうした先進国と新興国で2極化している状況をさらに詳しく見ていきます。
   
第6章のタイトルは「新興国と発展途上国における石炭需要は、世界の排出量増加の最大の要因」です。
   
  
上の図は、石炭、石油、天然ガスの化石燃料からの排出量に関して、排出量が増加した地域と減少した地域に分けて積み重ねグラフにしたものです。わかりやすいように少し乱暴ですが、増えた地域に「新興国」、減少した地域に「先進国」とラベルを付けました。このラベル付けは完全に一致していませんが、概ね一致しています。そして第6章の標題は、このグラフの結果を端的に表しています。端的に言えば、「先進国が減らしているのに、新興国が石炭を中心に排出量を増やしたために、世界全体では排出量が増えてしまった」ということなのです。
  
新興国のプラスと先進国のマイナスを相殺した結果が「世界」として示されますが、トータルとしての「世界」の数値を見るといずれの化石燃料由来の排出量においても増加であり、特に石炭からの排出が多いことが解ります。
   
こうした地域別の増減を今度は排出部門別に分解すると下図のようになります。
    
   
結果は少し意外なものになりました。電に関しては、増加も大きいのですが、減少も大きく、相殺すると輸送よりも小さくなりました。輸送においては先進国と言えども減少することはできていません。この輸送では、日本における減少が際立っているようですが、これはハイブリッドの普及によるものと推測します。(本報告書ではコメントがありません) 工業生産では、新興国の増加と先進国の減少が均衡しており、建設においては、新興国での増加がほとんどなく、世界でも減少となっています。この建設における排出減少には温暖だった冬が貢献しているそうです。
   
総体的には、先進国における減少と新興国における増加という図式になりますが、輸送においては減少の幅が小さく先行きが心配されます。
   
最後の第7章では、こうした状況を踏まえて、地域別の排出量、一人当たりの排出量がどう推移してきたかを俯瞰しまし、現在の排出状況を総括します。
   
左図は地域(国)別のCO2総排出量の推移を表しており、次のように解説されています。
   
排出量を取り巻く状況は変化し続けています。中国の総COの2排出量は2020年に先進国の合計を上回り2023年には15%増加しました。インドは2023年に欧州連合(EU)を抜いて世界第3位の排出源となりました。アジアの開発途上国の排出量の世界に対する割合は、2015年の約5分の2、2000年の約4分の1から、現在では約半分を占めています。また、中国だけで世界のCO 2排出 量の35%を占めています。」
中国で増加した排出量は、先進国が減少させている量の合計をはるかに上回る量となっています。中国はカーボンニュートラルに関して、先進国とは異なり、2030年までは増加、2060年に排出ゼロという目標を発表しており、この通りであれば、まだしばらくは中国からの排出増加はとまらないことになります。
   
一方で一人当たりのCO2総排出量を見ると事情は少し異なり以下のように解説されています。「先進国一人当たりの排出量は、2023年に世界平均を約70%上回り比較的高い状態が続いています。インドの一人当たりの排出量は、世界平均の半分以下にとどまっています。欧州連合(EU)の一人当たりの排出量は大幅に減少し、現在、世界平均より約15%多く、中国を約40%下回っています。中国の一人当たりの排出量は、2020年に先進国全体の一人当たり排出量を上回り、現在でも15%増加しています。2023年では初めて日本を上回りましたが、米国よりは3分の1低いままです。」
  
ここにこの排出問題の難しいところがあります。現時点だけみれば中国や新興国が増加をやめるように努力すれば、CO2排出は一挙に減少していくことは明らかです。一方で、一人当たりの排出量を見れば、中国はともかく、他の新興国は、先進国の水準より今なおずっと低いレベルにあります。ましては、これまで先進国が多くのCO2を排出して、恩恵を享受してきたことを考えると、今後一律に減少させることを強要できるのか議論のあるところとなります。
   
以上で報告書の内容は全てご紹介しました。もう一度第1章のエグゼクティブサマリーを示します。
   
   
今度は、するすると書いてあることが理解できるものと思います。この第1章のタイトルに「2023年のCO2排出量 過去最高を更新したが、トンネルの先に光はあるのか?」とありますが、果たしてトンネルの先に光があるのか?と疑問符を付けなければならない意味はすでにおわかりだと思います。確かに先進国は、かつてないほど急激にCO2排出量を減少させています。この背景にはクリーンエネルギーの急激な普及があり、決して一過性ではありません。その一方で、新興国の増加は止まりませ。また排出分野別ににみても輸送における削減は進んでいませんはたしてこのままで、目標とする排出量の達成はできるのかどうか、疑問が残るというのがこの標題の真意と思われます。
   
さらに米国の大統領選挙の行く末が大変心配されます。共和党の候補者はトランプ前大統領で決定となりましたが、トランプ前大統領は前回当選時にパリ協定離脱に署名し、それをバイデン大統領が復活させたという経緯があります。2023年においては米国も先進国の一因としてクリーンエネルギーの導入をはじめ、排出量削減に貢献していました。もしトランプ氏が大統領に選出された場合には、またパリ協定からの離脱となるのでしょうか?そしてアメリカの排出削減は停止するのしょうか?それは到底許容できるものではないように思われます。
   
今やらなかればならないことは一つしかないように思います。それは、クリーンエネルギーをもっと世界の隅々まで広めていくことです。化石燃料を減らす代替策はこれしかないことは明らかです。クリーンエネルギーへの転換と経済発展、さらには先進国と新興国とをどう折り合いをつけていくのか?テクノロジーだけではなく、政策的にも人類の叡智が試されているように思われます。

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