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かんとこうブログ

2024.03.15

電力料金の改訂と電力会社の決算

先日電力会社から料金改定のお知らせを受け取りました。またぞろ値上かと思ったら、通常の値上ではなく、託送料金改定に伴う料金の改訂ということでした。託送料金とは、小売電気事業者が電気を販売する際に電力会社の送電設備を使用することに対して支払う料金のことで、大きな影響を及ぼす金額ではないようでした。

しかし、同封されていた改訂料金を見ると、なんだか昨年申請されて改訂された料金とは異なっているようですので、調べてみました。やはり料金は変わっていました。電気料金には燃料費調整額というものが含まれており、燃料費の変動によって変動します。このため燃料費が変動する場合には、電気料金も変動することになります。

ということで、このところの燃料費調整額とエネルギー価格の推移を調べてみました。さらに2023年度第3四半期までの電力会社の決算内容もついでに調べましたのでご紹介します。

燃料費調整額について代表的な東京電力と関西電力について2022年4月から2024年4月までの推移を示します。いずれのグラフもそれぞれの会社のホームページから引用しています。

一見似たようなグラフに見えますが、違いもいくつかあります。最も大きな違いは、東京電力が23年6月まではプラス、それ以降はマイナスであるのに対し、関西電力は期間中全部でプラスだということ、さらに最高と最低の差が、東京電力が25.21円/Kwhであるのに対し、関西電力はその半分以下の9.15円/Kwhであることです。22年4月から24年2月の期間の平均としては、東京電力がプラスマイナスゼロ付近、関西電力がプラス4~5付近ということになります。この数値は、基準の燃料費に比べて高いか安いかと言う数値なので、これで是非を論じるものではありませんが、電力会社によって電力料金も燃料費調整額も異なっているためにこのようになっているということです。

燃料費調整額が異なるのはそれぞれ使用ている燃料の割合が異なるためです。1年前のデータですが各社の発電のエネルギー源は下図のようになっており、それぞれ異なっています。

東京電力と関西電力を比較すると、東京電力は天然ガスの割合が高く関西電力の倍ほどあります。関西電力はその分を原子力で賄っており、ここが最も異なる点です。その他のエネルギー源が不明なのでこれ以上の考察はできませんが、原子力の方がエネルギー価格として安定しているのであれば燃料費調整額の変動幅の差について説明がつきます。

一方で原油、石炭、天然ガスの価格の推移は下図のようになっています。

2022年以降で見ると3種とも2022年の6-9月に価格のピークが来ていますが、その後の価格下落の幅でみると、石炭の下落幅が最も大きく、ついで天然ガス、原油となっています。燃料費調整額に関しては、こうしたエネルギー価格の変動要因以外に、政府の激変緩和措置による補助金が含まれており、燃料調整額のグラフの最下段にその補助金に関する記載があります。東京電力では「2023年2月分から9月分までは7.00円/kWh、2023年10月分から2024年5月分までは3.50円/kWh、2024年6月分は1.80円/kWh」の補助金が含まれているとのことです。しかもこの補助金の額は電力会社によって異なっているようですので、ますます複雑で、エネルギー価格との因果関係がわかりにくくなっています。

というわけで燃料費調整額と燃料コストの関連付けはできませんでしたので、今度は電力会社の決算のご紹介します。こちらは極めて明快です。各電力会社の第3四半期決算一覧表をご覧ください。

字が小さくて申し訳ありませんが、左側が2023年度、右側が2022年度です。第1~第3四半期までの累積の数値ですが、2022年度は赤字、2023年度は黒字と明確に分かれています。

すべての会社が黒字であり、収益については減収の会社もありますが、東京電力と沖縄電力を除き営業利益は二桁%になっており、東京電力を除き配当も予定しています。

上左図は売上収益の前年比増減%で、必ずしも収益自体が増えてるわけではないことがわかります。全社合計の前年比では、売上収益が4220億円減でした。売上収益が減ったことについては、単価が上がった分使用量が減ったと考えるのが普通ですが、燃料費調整額により単価が変動しますので、一概には断定できません。

上右図は、営業利益顎の2022年と2023年の対比です。全社合計の前年比では、営業利益は3兆3000億円増加しました。

全体の対売上高営業利益率は12.7%、純利益率が9.8%と見事な成績となり、全社の純利益合計は1兆4430億円でした。エネルギーコストの高騰で昨年は中部電力を除き赤字に転落した電力業界ですが、今年度は大幅な黒字になりそうです。本来燃料費調整額は、こうした燃料コストによる変動が電力会社の経営状態を脅かすことがないようにと設定された制度だと思っていましたが、必ずしもバッファーの役目を十分に果たしているわけでもなさそうです。本件も調査を継続します。

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