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かんとこうブログ

2024.03.28

SAFの中身と作り方

最近SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の話を耳にする機会が増えました。特に廃油からSAFを作ることができると聞いてどのようにして作るのか興味がありましたのでSAFについて調べてみました。SAFについての情報はネット上にたくさんあるのですが、製造方法まで書いてあるものがなかなか見つかりませんでした。そうした中で「けむさん 化学と化学産業」というサイト(下記URL)にとてもわかりやすい解説がありましたので、その中から引用させてもらいながら、私が知りたかったこととその内容をご紹介していきたいと思います。

https://chem-3.com/saf-bionaphtha/

   

私が知りたかったことの一つ目は石油由来のジェット燃料とSAFの組成です。石油由来のジェット燃料の組成がほぼ灯油に近いというのは知っていましたが、詳しい組成までは調べたことはありませんでした。以下にジェット燃料に求められる条件、組成、規格例と灯油の組成についてまとめたものを示します。(ウイキペディアより引用)

原油に含まれる炭化水素のうち、ジェットエンジンの燃焼条件に適した部分を取りだして精製し、不凍財などの添加剤を加えたものということになります。灯油の組成は炭素数9から15の炭化水素が主成分とありますので、ジェット燃料もそれに類似した組成のはずです。SAFの組成も石油由来のジェット燃料と同様に炭化水素であり、炭化水素の種類としては後述するように少し異なるところはありますが、燃焼適性の条件は満たしています。

少し本題から外れますが、ブラジルではバイオガソリンとしてバイオエタノール100%のものが使用されています。つまりエチルアルコールがガソリンの代わりに使われています。日本でもバイオエタノールを混合したものがバイオガソリンとして使用されています。(エタノール100%の場合には腐食対策が必要となりますので、日本はガソリンに混合する比率が低く抑えられています。)

またバイオディーゼルの組成は、脂肪酸のメチルエステルであり、廃油を原料とする場合には、廃油(脂肪酸トリグリセライド)を加水分解して得られる脂肪酸をメチルアルコールでエステル化したものが燃料となります。これに対してSAFは後述するように、組成的には炭化水素ですので、自動車用のバイオガソリンやバイオディーゼル燃料とは化学的には全く異なるものです。従って同じ廃油を原料としたとしても製造方法も全く異なるはずです。

ということで2番目に知りたかったことは、SAFの製造方法です。実はSAFに関しては廃油から製造する以外にも多くの方法があり、実際に製造されていることがわかりました。下図にさまざまなSAFの製造方法を示します。

右端が最終生成物となりますが、実はいずれの方法でも最終生成物は、さまざま炭化水素の混合物となり、その中から沸点の違いによりSAFとナフサに分けられます。ナフサは粗製ガソリンとも呼ばれSAFよりも沸点が低いものの混合物です。

植物油(廃油)を原料とするのは一番上の方法で、HEFA(Hydroprocessed Esters and Fatty Acids:エステルおよび脂肪酸の水素化処理法)と呼ばれるものです。この方法の詳細を下図に示します。

前述したように、原料となる植物油(廃油)はグリセリン3つの脂肪酸がエステル結合でつながった構造をしていますが、この植物油を触媒存在下で水素化して酸素を外すことでさまざまな炭化水素を生成することができます。生成した炭化水素を蒸留分別することでSAFを含むそれぞれの用途に適した炭化水素を選ることができます。この方法によるSAFの生産は、海外ではすでに商業化されており、日本でも実プラントの建設が始まっています。

この他の方法としては、上から2番目と一番下のフィッシャー・トロプシュ反応を利用した方法、上から3番目のバイオアルコールから脱水~水素化プロセスを経て炭化水素を生成させる方法などがあります。詳しくは冒頭ご紹介した「けむさん 化学と化学産業」のサイトに詳しい解説がありますので、ご参照ください。

さてこのSAFですが、ヨーロッパなどでは自国発着便について使用の義務化も進んでるいるようですが、すべてのジェット燃料を置き換えるということはできません。それは石油由来のジェット燃料と組成的に全く同じというわけではなく、すべて置き換えてしまうと不具合が出てくるからです。下表は石油由来のジェット燃料とSAFの組成についてまとめたものですが、石油由来のジェット燃料には含まれている芳香族化合物がSAFには含まれていない場合がほとんどです。芳香族とはベンゼン環をもった化合物を指します。

ジェット機は高高度を飛行しますので、使用される燃料は低温になっても適当な流動性を保持することが必要になりますが、芳香族が存在しないSAFではこの低温時の流動性保持が困難なのです。現在のところSAFに利用する場合10%混合が一般的な理由がここにあります。

しかしながら、先日ご紹介したIEAの「CO2排出2023」報告書でもありましたように、コロナ禍明けの航空旅客の急激な回復はCO2排出量増大の一つの要因として挙げられており、手をこまねいて見ているわけにはいかない事情もあります。コストは石油由来燃料との差が歴然ではありますが、地産地消を目指して日本でもSAFの生産を進めなければいけないことは確かなようです。

本日の内容は、その多くを「けむさん 化学と化学産業」から引用させていただきました。感謝の意を表します。

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