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かんとこうブログ

2024.04.05

消費者と景気ウオッチャーによる今の景況感

昨日は日銀短観をご紹介しました。日銀短観は、企業幹部から見た景況感とも言えますが、気になるのは消費者はどう見ているのか?ということです。内閣府には、こうした消費動向に関する調査が二つあり毎月結果が公表されています。ひとつは消費者を調査対象とした「消費動向調査」、もうひとつは、消費者の動向に敏感な人たちを調査対象とした「景気ウオッチャー調査」です。今日はこの二つの調査結果から消費マインドの今を探ってみたいと思います。

「景気ウオッチャー調査」の調査対象は以下のようになっています。家計関連調査が68.5%、企業関連調査が21.4%、雇用関連調査が10.0%です。家計関連調査の対象は小売業、飲食業、サービス業、住宅など実際に日常消費者と接している人たちの声を集めており、中でも小売業関係者が全体の39.7%と最も多くなっています。続いてサービス業が全体の19.8%、飲食業が5.0%、住宅関連が4.1%となっています。

企業動向関連は21.4%で、製造業と非製造業がほぼ同じとなっています。すなわち、「景気ウオッチャー調査」の調査対象を一言で言えば、「物やサービスを提供する側の人たち」ということになります。一方、「消費動向調査」は、あくまで消費者の立場での回答を求めており、「景気ウオッチャー調査」とは大きく異なります。

調査方法は、両者ともほぼ同じで、各設問に対し、「良くなる・大きくなる・増える」に(+1)、「やや良くなる・やや大きくなる・やや増える」に(+0.75)、「変わらない」に(+0.5)、「やや悪くなる・やや小さくなる・やや減る」に(+0.25)、「悪くなる・小さくなる・減る」に(0)の点数を与え、この点数に各回答区分の構成比(%)を乗じ、乗じた結果を合計して、項目ごとに消費者意識指標(原数値)を算出となっています。結果が50というのは、「変わらない」または「良悪拮抗」の状態ということになります。

「消費動向調査」、「景気ウオッチャー調査」の現在の景況感を並べて示します。

左から「消費動向調査」、「景気ウオッチャー調査」の家計動向関連、「景気ウオッチャー調査」企業動向関連です。まず気づくのが「消費動向調査」と「景気ウオッチャー調査」の全体的レベルの差です。全体的に「消費動向調査」の方が「景気ウオッチャー調査」よりも約10ポイント低くなっています。実は毎回このように差があり、その理由は買う側と売る側の、もっと言えばお金を払う方と受け取る方の基本的な意識の差であると思われます。それではグラフをひとつずつ見ていきます。

左の「消費動向調査」においては、全体が平行移動的に推移をしています。項目によって回答値には差があるものの、推移はほぼ平行移動です。幸いなことに2024年に入ってからも数値は上昇傾向にあり、消費者マインドは冷えていないようです。

真ん中の「景気ウオッチャー調査」の家計動向関連においては、それぞれの業種で異なる動きになっています。飲食関係、サービス業は昨年の好況から1月に大きく落ち込んだあと2月に再上昇、小売はほぼ横ばいで動きが乏しく、住宅は昨年の低迷から上昇基調が続いています。

右の「景気ウオッチャー調査」の企業動向関連では、家計動向に比べて動きは小幅で、製造業、非製造業とも50近辺で小刻みな動きを繰り返しているようです。

これらの調査結果からは、消費マインドは今のところ冷え込んではいないと考えて良いのではないかと思います。昨日の日銀短観では、製造業を中心に先行きの不安感が出ているようでしたが、消費マインドはそう悪くはないのではないか、そしてその背景には、大幅賃上げムードがあるのではないかと推定しています。これは3月の調査結果がもうすぐ出ますので、さらに明らかになると思われます。

最後に日銀短観のDI値と景気ウオッチャー調査」の企業動向関連を比較してみました。この両者では調査頻度や回答方法が異なりますので直接の比較が意味がないかもしれませんが、一応並べて眺めてみました。

日銀短観のDI値は、「良い」から「悪い」を差し引いた数字の%です。数学的には、「景気ウオッチャー調査」の企業動向関連の5ポイントが日銀短観の10ポイントに等しくなるとの仮定で縦軸を調整しています。

日銀短観は3か月の1回の調査なのでさすがに比べるのは無理があるようですが、あえてコメントするとすれば、やはり、「景気ウオッチャー調査」では企業の景況感というよりも、消費者の動向と言う観点で回答しているのに対し、日銀短観では、企業経営としての景況感という観点で回答しているのではないかと想像されるというところでしょうか?

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