世界一の色見本帳の色番号

塗料に関係する仕事をする人々にとって、(一社)日本塗料工業会(以下日塗工)が発行している色見本帳はとても身近でなじみのあるものです。この日塗工の色見本帳は、実は世界一の発行部数を誇る色見本帳であることはあまり知られていません。海外の色見本帳はというと、個々の塗料メーカーが独自に発行するのが一般的で、塗料メーカー毎に、さらに国や地域ごとに編集されて発行されたりしています。日本のように塗料工業会が発行している例は韓国位しかありません。

日塗工の色見本帳 2019年のK版  このように広げると扇形になるため海外ではFan-deckと呼ばれている。
 

共通の色見本帳が存在していることのメリットは、非常に大きいものがあると考えていま

す。ユーザーはひとつの色見本帳だけ持っていれば、どの塗料メーカーの塗料でも色指定ができます。大型塗装物件などを分割受注したときにも、共通色見本帳の存在は無用なトラブルを防ぎます。塗装屋さんに、日塗工色見本帳の色番号だけ伝えれば色指定は完結するからです。

この日塗工色見本帳の色番号は実によくできており、番号を聞いただけでおおよその色が想像できる優れものですが、御存知だったでしょうか?もし御存知でなかった方のために、今日は日塗工色見本帳の色番号の解読方法を伝授したいと思います。

実はこの色番号の解読方法は、色見本帳の表紙に続く10枚ほどの「発行にあたって」という中に詳しく説明されているのですが、普段あまり目がいかない場所でもありますので、御存知ない方も多いようです。今日の解説は、実はこの色見本帳に掲載されている内容の切り売りです。

色番号の説明の前に「マンセル表色系」の説明をします。これも色見本帳の説明書の中をそのまま切り取って説明しますが、「マンセル表色系」とは色を数値で表すための分類法だと思ってください。「マンセル」は知っているという方は、ここは読み飛ばしてください。

マンセル表色系では色を三つの属性で表します。三つの属性とは、色相(どのような色あいか)、明度(どのような明るさか)、彩度(どのような鮮やかさか)です。上の左の図を見てください。すべての色はこの色立体の中のどこかに入っており、この色立体の中心軸から出ている枝の方向(色相)、枝の高さ(明度)、枝の長さ(彩度)によって位置がきまります。この枝の方向、高さ、長さの数値がそのまま色を表す数値となり「マンセル値」と呼ばれています。

 日塗工の色見本帳では、色相は赤(R)、黄(Y)、緑(G)、青(B)、紫(P)の5原色に、それぞれの中間色相であり、YR、GY、BG、PB、RPを加えた10の色相に分けられ、さらにそれぞれが、2.5、5、7.5,10の4区分されています。これが基本となる40色相ですが、この他に8.75R、1.25Y,6.25G、6.25PBの4つの色相が加えられています。これは、特別に重要な指定色の色相である、指定される極めて頻度が高いなどという理由で設定されているものです。

明度については、黒を0、白を10として、その間を感覚的に10段階に分けたものであり、一方彩度は無彩色を0として値が高くなるほど鮮やかになるよう感覚的に等間隔になるように設定されています。

上の右図の2.5Rの色相における、明度と彩度に変化よる色の変化を確認してみてください。おそらくマンセル表色系の仕組みが直感的に理解できると思います。横軸が彩度、縦軸が明度です。それぞれの色相でこのような色彩平面が存在しているのです。

 こうしたマンセル値がどのように表記されるか、ですが、色相が2.5R、明度が4、彩度が10の場合には、2.5R 4/10と書き、“2.5R、4の10”と読みます。さあこれで、マンセル表色系はわかりました。こんどは色見本帳の色番号との関係です。

日塗工の色見本帳の色番号は、通常①アルファベット1文字+②二桁数字+ハイフォン+③二桁数字+④アルファベットという構成になっています。①は発行年度を示しています。最新版は2021年のL版なのでLと入ります。②は色相を表しており、数字二桁ですべての色相を表すため、マンセル表色系の色相記号とは少し異なる点があります。

10色相はマンセルではアルファベットでしたが、色見本帳では0から9の数字一文字で置き換えました。それが十の位の数字です。

同じ色相の中の区分は基本的には2.5、5,7.5、10ですが、これを2,5,7,9の数字一つで表すことにしました。これが一の位の数字です。なぜこのようなややこしいことをしたかというと、昔コンピューターが今のように発達していなかった頃、コンピューターによるデータ処理において、とにかく入力する桁数、文字数を少なくすることが要求されたためと聞いています。少しややこしいのですが、慣れれば問題ありません。先人たちの苦労の賜物と努力を認めてあげてください。

これに比べれば、明度は簡単です。単純にマンセルの明度を10倍した数字になっています。なぜ10倍したのかは、先ほどと同じ理由で小数点を嫌ったものと思います。彩度はマンセルでは0から14の数字でしたが、ここでも桁を少なくするため、一文字ですむアルファベットに置き換えています。

いかがでしたでしょうか?聞いてすぐ、日塗工見本帳の色番号から色のイメージが浮かぶというのはさすがに難しいと思いますが、少しは親しみをもって接することができるのではないかと思います。