「15分で検査ができるキットが販売!」されるのですが・・

 昨日の午後2時15分、クラボウ(倉敷紡績株式会社)から「「新型コロナウイルス抗体検査試薬キット」の販売開始について」という発表があり、「コロナウイルスを15分で検査できるキットが販売開始」とネットのニュースが配信されました。直後、同社の株はストップ高となり、同社のホームぺージにはアクセスが集中して接続できない状態となりました。しかしながら、こんな大ニュースが夜のニュースではほとんど報道されることはありませんでした。今日はこの件について書きます。

 まず、販売が開始される「検査キット」の概要ですが、本サイトの2月28日付「コロナウイルスに関する簡易検査方法」に関する記事でご紹介した二つの方法のうちのイムノクロマト法を用いた簡易検査キットです。イムノクロマト法というのは、簡単に言えば、試験キット上で病原(抗原)と免疫(抗原抗体)反応を起こさせ、それを検出するという方法です。現在すでにインフルエンザの検査に使用されている方法で、15分程度の短時間で検出可能であり、いわば国民待望の検査キットともいえる簡易検査キットです。

 今回発表したクラボウ以外にも日本ではたくさんの研究機関や会社で研究されていましたが、なぜクラボウがいち早く販売開始に漕ぎつけたのでしょうか?そのカギは、このキットが開発された場所にあります。クラボウの発表資料によれば、今回発売するキットは、中国にある提携先企業が開発したもので、これを輸入して販売するとのことです。このキットは、中国における標準診断法の一つとして、すでに中国の診療ガイドラインに採用されているそうです。

 なぜ中国なのか?その答えは、抗原であるウイルスの入手の容易さにあると思われます。2月28日の時点では、日本においては、まだコロナウイルスがこうしたキットの開発機関に提供されていないとのことでした。このキットの開発には、ウイルスと免疫を作る抗体の開発が必須であり、このためには研究機関がウイルスを入手できることが必須条件となります。中国では、流行時期が早かったこともあり、ウイルスの入手も日本に比べると格段に早く、それが早期の開発につながったものと思われます。

 しかしこのクラボウのキットですが、よく読むと、このキットは「体外診断用医薬品ではなく、ウイルスの抗体の有無をみるための研究用試薬キットとしての使用に限定」されています。つまり、患者の診断には使用できないのです。なぜ使用できないのか? それは、診断や治療に使用されるものは、臨床試験を経て、国の認可を受けなければならないからです。販売先も衛生研究所などの研究・検査機関に限定されており、病院などの医療機関には販売されません。このことが昨晩のニュースで取り上げられなかった理由だと思われます。

 現時点では、臨床試験や認可の時期について言及されていませんが、このキットは、PCR法に比べて検体サンプルの採取方法や採取部位の影響を受けにくいという優位性もあり、一刻も早い医療用への認可が待たれるところです。