「サーモクロミック塗料」の文献概要

 昨日のブログでご紹介した「サーモクロミック(高日射反射率)塗料の文献について、その概要をご紹介することにします。塗料関係の方々に少しでもこの塗料に興味をもってもらいたいと思うからです。(文献そのものを掲載することは著作権の関係でできませんのでその点はご理解ください)

 掲載された雑誌は、”Solar Energy” 83 (2009)538-551で、5名連名の著者のうち筆頭のT. Karlessi氏はじめ4名がギリシャの国立カポディストリアン大学の建築環境学科、残りの1名が「サーモクロミック顔料」を提供したギリシャの”Colors Chemical Industry”という会社の所属です。表題は日本語に訳すと「建築物、都市構造物のためのサーモクロミック塗料の開発と評価」とでもなるでしょうか。

 この実験で使用された「サーモクロミック顔料」の詳細については、「共同研究者である”Colors Chemical Industry”から提供された」という情報しかありませんが、30℃以下では呈色し、それ以上では消色すると書かれており、6色の「サーモクロミック顔料」が供試されています。サーモクロミズムの様相は、数枚の写真で示されていますが、例えば青では確かに30℃で色の消失が始まり37℃で完全に白色に変わっていました。この転移温度は色によって多少差異があり、緑の完全白色化は42℃でした。

 実際の屋外環境における”遮熱効果”については、同色に揃えられた市販の「クールペイント」と「一般塗料」との比較という形で、緑、黄、茶、黒、青、グレーの6色について、それぞれ二酸化チタン顔料の併用の有無について試験片が用意されました。1色について6枚の試験片ということです。2007年の8月から9月半ばまで屋外で暴露され、気象条件とともにそれぞれの試験片の表面温度が連続的に計測され、結果は日中(6時~20時)平均温度、夜間(20時~6時)平均温度、日中最高温度という形でまとめられています。

結果は極めて明快で、いかなる色、いかなる温度データにおいても、塗料タイプについて比較すれば、一般塗料>クールペイント>サーモクロミック塗料の順に温度が高く、二酸化チタンの併用について比較すれば、併用なし>併用あり という順でした。特に日中最高気温のデータでは、各色とも「サーモクロミック塗料」は、他のいずれの塗料よりも10℃以上低い温度でした。

これらの塗料の分光反射率を測定した結果も紹介されており「サーモクロミック塗料」は全ての色で、「クールペイント」や「一般塗料」に比べ、近赤外領域において極めて高い反射率を示していました。

 屋外暴露10日後における経時変化も紹介されており、可視光領域での反射率増加、近赤外領域での反射率低下が観察されています。日射反射率という観点では大きな変動はないのですが、塗色の維持という点では問題がありそうです。

 以上がこの文献の概要です。この文献では、高温環境でのさらに高率での日射反射が主たる目的のようですが、30℃程度の転移温度で日射反射特性を変化させる塗料の用途は、日本のような気候の国にこそあるのではないかと思っています

ちなみに「サーモクロミック顔料」を提供した”Colors Chemical Industry”をネットで検索しましたが、ヒットしませんでした。もし情報をお持ちの方がいらっしゃればご一報ください。