塩野義の経口薬ゾコーバが承認されなかった理由

ちょうど1週間前になりますが、薬事・食品衛生審議会薬事分科会と医薬品第二部会が合同開催され、塩野義製薬/北海道大学が開発・承認申請しているコロナウイルス感染症の経口薬「ゾコーバ」の緊急特例承認につての審査が行われ、2時間に及ぶ審議の結果、承認は行わず継続審査となりました。今日は「ゾコーバ」が承認されなかった理由について様々な媒体の報道内容から引用してご紹介したいと思います。

まずゾコーバがどのような薬かというところから始めたいと思います。

化学構造とIUPAC名などはWikipediaから引用していますが、これまで承認申請されてきたコロナウイルス感染症薬はすべてWikipediaに詳しい情報が収録されていました。この薬の作用機序はすでに国内で使用承認されているファイザー社の「パキロキッド(パクスロピド)」に含まれる「ニルマトレピル」と同じで、下図のようなものと考えられています。(本ブログのファイザー薬からの引用です)

簡単に言えば、ウイルスが体内に侵入して増殖する過程で、まずウイルスの部品が繋がった大きなタンパク質を複製し、それを酵素で切り分けてウイルスを複製することができるのですが、この大きなタンパク質を切り分ける酵素の働きを阻害する薬とされています。

さて、この塩野義の「ゾコーバ」の薬としての効能については下図左側のようにまとめられます。1日1回5日間服用でオミクロン株にも有効、体内のウイルスが投与3回後の時点で90%以上減少したとされています。一方で、今回審査対象となった治験の内容は下図の右側にまとめられています。

今回審査対象となった治験は、3段階ある治験の2段階目の後半であり、オミクロン株が流行した今年の1月~2月に軽症から中症の428人を対象に行ったもので、結果を要約すると「ウイルス数は確かに減少したが、症状についての明確な改善が認められなかった」ということになります。

今回の審査会はいろいろな意味で注目されていました。コロナに対する国産初の経口薬であるということに加え、今年5月に創設された「緊急承認制度」が初めて適用されるかどうかという点でも注目されていました。以下はネットを探して拾ってきた様々のメディアの報道内容です。少しずつ視点が異なるような気がしましたので、ご紹介します。

左側3件は委員(会)の意見・結論を伝えたものですが、NHKとロイターが淡々と書いてあるのに対し、2番目の薬事日報は、委員会の結論に対し一歩踏み込んで「妥当な判断である」と書いています。

委員会の冒頭で、「ゾコーバ」の治験結果について医薬品医療機器総合機構(PMDA)から説明されたのですが、かなり塩野義側に対し厳しい報告内容であったことが右下のサイトで紹介されています。また、現場で薬を処方する医師の立場からの反応も紹介されており(右上)「臨床効果に対する評価が不十分」との意見が紹介されています。一方で「この薬のために創設した制度と言ってもよいほどなのに何をためらうのか?」という論調の報道もあったようで、議論を呼んでいます。

本薬は継続審議となりました。2022年11月に予定されている国際共同第2/3相試験の第3相部分の結果が明らかになった後、改めて承認の可否が審議される見込みとなっています。

本薬については、政府が承認が下りれば100万人分購入することを明言しており、4月以降すでに生産に入っていると言われていますが、承認は早くとも11月以降ということになりました。