2022年1月改訂のIMF世界経済見通し

先週発表されたのは4月改訂版でしたが、混同して1月改訂版についての解説記事を書いてしまいました。4月改訂版では、ウクライナ侵攻の影響も加味されて、一層の経済減速、インフレ圧力の高まりが予測されています。この内容については明日にでもご紹介します。とりあえず1月改訂版はこのままの形で掲載しておきます。混乱してしまい申し訳ありませんでした。

IMFから2022年1月改訂の世界経済見通しが発表されています。日本語での報告書全般も同時に公開されていましたので、ざっと斜めに読んでみました。発表は先週なのですが、この経済見通しが作成されたのはあくまで1月時点ですので、その後の需要事案であるロシアによるウクライナ侵攻の影響は基本的には考慮されていない点に注意をする必要があります。2020年12月時点での予想に比べ、2022年2023年の各国GDP成長率の予測値が下方修正したことはニュース等でご存知の方も多いかと思いますが、この報告書の内容について、もう少し詳しくご紹介したいと思います。まずは、世界各地域の2021年のGDP成長率推測値、2022年2023年の予測値をご紹介します。報告書本文の日本語版は下記からご覧ください。

   

https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2022/01/25/world-economic-outlook-update-january-2022?msclkid=9908755ac2ec11ec821083cd1d321eaa 

一部を除き、2022年2023年の成長率予測値は2021年を下回るとのと予測になっています。この報告書には各国のGDP成長率の一覧表も載っていましたので、それらの数値をグラフ化して示します。最初はG7にスペインを加えた8か国からです。

グラフの縦軸は揃えてありますので、上下の振れ幅の大きさで各国の成長率の大きさが比較できます。各グラフ右下に貼り付けた数値は、2019年を100とした時に2023年はいくつになるのかという数値です。

比較してもらうとわかりますが、日本は2020年の落ち込みこそ一番軽微でしたが、2021年以降の成長率が小さく、最終的に2023年においては、2019年からの成長率がこの8か国の中では最も小さくなっています。2019年から2023年にかけての成長率が最も大きいのはアメリカです。単純計算で年率2%の成長を確保していることになります。次は欧米以外の地域を代表する国々です。

これらの中では、中国とインドの成長率が群をぬいています。ロシアについてはそこそこの経済成長が期待できるとなっていますが、これはウクライナ侵攻前の予測であり、経済制裁など全く考慮されていません。2022年以降は大幅な減速になり、-8.5%という数字が出されているようです。

さてこのIMFの世界経済見通しの本文には、もう少しいろいろな情報がありました。その中で、図表にされているものを中心に、参考になりそうなものをご紹介します。まずは世界のインフレについてです。

2020年12月から2020年1月までの間に、世界中でインフレが進行しており、特に欧米で顕著であるとしています。インフレの要因は、化石燃料に代表されるエネルギー価格の高騰であり、地域を問わずインフレの主要因となっています。加えてアメリカでは、サプライチェーンの混乱、港湾の混雑、ターミナルの制約などが拍車をかけていること、中南米やカリブ諸国では輸入品の高騰が大きな要因となっていることが説明しています。

また、2022年1月時点での経済に影響を及ぼす最大要因はなんといいてもコロナ禍であり、ワクチンの接種率の差異がGDPの改定幅に影響を及ぼしているとしています。左の図3にはワクチン接種率が高い場合にはGDP成長率がプラス側に押し上げられているが、接種率が低い場合にはマイナス側に押し下げられていることを示しています。

またコロナパンデミック全体としては、2021年における世界全体のGDPを0.5%引き下げ、インフレを1.0%押し上げたと解析しています。(右の図4)

今後の世界経済に影響を及ぼす要因としては以下のものが挙げられていました。

①新型コロナウイルスの影響 ②アメリカの量的緩和政策縮小の影響 ③サプライチェーン混乱の緩和 ④労働市場逼迫の影響 ⑤中国の不動産市場減速の深刻化 ⑥進行中の気候非常事態の影響 ⑦その他の要因・・・東欧の地政学的緊張

繰り返しますが、この改訂版は2022年1月時点のものであり、ウクライナ侵攻前でした。ウクライナ問題についてはすでにアメリカがロシアによる侵攻の上の可能性について警告を出してはいたものの、要因の中ではわずかに「その他の要因」の中に「東欧の地政学的緊張」という言葉で触れられていたにすぎません。従って、今回の経済見通し改訂の中で、その影響が考慮されてはいません。

上記の要因が経済に影響を及ぼす大きな要因であるとすることに異議はありませんが、今や2022年1月から事態は大きく変化しており、コロナパンデミックに比肩する大きな要因としてウクライナ問題が起きてしまっています。ウクライナ侵攻以前の時点での世界経済見通しの中でも、日本の成長率はG7+1の中でも最低であると予測されていました。ウクライナ侵攻以降に起きた急激な円安をうけて日本の見通しはさらに厳しいものとなっていると想像せざるを得ません。ウクライナ問題が長期化の様相を見せている中で、日本経済に対する憂慮は深まるばかりです。