菅首相の記者会見の中で、気になったこと

7月8日の19時から、菅総理の第4次緊急事態宣言発出に関しての記者会見がありました。その中で気になった一節がありました。その気になった箇所を首相官邸ホームページから引用します。

https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2021/0708kaiken.html

「先行してワクチン接種が進められた国々では、ワクチンを1回接種した方の割合が人口の4割に達した辺りから感染者の減少傾向が明確になったとの指摘もあります今のペースで進めば、今月末には、希望する高齢者の2回の接種は完了し、1度でも接種した人の数は全国民の4割に達する見通しであります。」

これを聞いた人たちはどのように受け取るでしょうか?そのまま理解すれば、「ワクチン接種が先行した国では、1回目接種が40%に達すると感染者が減少傾向となった。日本も今月末には1回目接種者が40%に達する見通しである。(したがって、今月末には感染者が減少傾向になることが期待される)」ということに聞こえないでしょうか?さすがに ( ) の中までは言葉にしていませんでしたが、聞いた人がそのように考えることを期待しての発言ではないかと疑われかねない気がします。

先日ご紹介したように、1回目接種が40%を超えても感染者が必ずしも減少傾向になるとは言えません。イスラエルなどそのように減少した国もありますが、そうでない国もあります。数的に見ても減少した国が多いとも言えません。また感染者の増減には、ワクチン接種率以外の要因もあり、例えばロックダウンの実施の有無など他の対策の効果も吟味すべきであろうと思われます。

加えてずるいのは、語尾に「との指摘もあります」と断定を避けている点です。おそらく、この原稿はご本人がお書きになったものではなく、周辺で用意されたものだと思われますが、国民を対象とした記者会見での発言には、もっと正確を期してもらいたいと思います。

参考までに先日ご紹介した接種率40%越えと新規感染者の関係に関する記事の該当部分を再掲します。2021年6月25日の掲載分からの抜粋です。

————————————————以下再掲————————————————–

データソースは札幌医科大学のサイトです。ワクチン接種率と感染者数を同時に表示できる仕組みがあるので、各国ごとにワクチン接種率と感染者数の推移を調べてみました。

4か国ずつ表示します。少し見にくいですが、左下から右上に上がっていく点線がワクチン接種率で実線が感染者数です。赤い横線が接種率40%のラインで、下向きの赤い矢印は接種率が40%に達した時点を示しています。データとして見る場合には、接種率が「部分接種率」か「完全接種率」かを区別する必要があります。とりあえず「部分接種率」、すなわち2回接種のうち1回以上接種を受けた割合と感染者数の関係です。

これらの国は、世界で最も接種の進んだ国に分類されると思います。中でも最も進んでいる左上のイスラエルですが、なるほど40%に達したころから感染者が減り始めたように見えます。特に60%近くから急激に減っています。また右上のカナダも接種率が40%に達した時点から減少の度合いが急激化しているように見えます。

ところが、その他の国は様子が異なっています。左下のイギリスでは、接種率が40%を超えた前後で感染者数に目立った変化はありません。またイスラエルと並んで接種が進んでいるバーレーンでも、接種率40%前後で感染者の動向に目立った変化はなく、増加傾向が続いています。

ここでは図示していませんが、アメリカはカナダと似たような状況で40%を超えた時点から感染者が緩やかに減少をはじめ、チリは40%を超えても感染者数に変化はありませんでした。

ここまで要約すると、部分接種率40%超えと感染者減少の関係については、イスラエルでは「あり」、カナダ、アメリカでは「ありそう」、イギリス、バーレーン、チリでは「なし」でした。