1日100万回接種するのに必要な医療スタッフの数は?

今日は、ワクチンの一日100万回接種をめぐる話題です。

一昨日の党首討論で、菅総理が「1日の接種回数が100万回を超えた」と述べて物議をかもしました。実はこれは、事実ではなく、翌日午前の会見で官房長官が訂正するといった事態になりました。この間の事情について、時事通信のサイトから引用してご紹介します。

「首相官邸のホームページ(HP)によると、8日時点の医療従事者と高齢者に対する接種の累計は約1937万回となり、前日比で約102万回増えた。これを踏まえ、首相は「きのうは100万回を超えてきた」と明言した。」というものです。ところが、「加藤勝信官房長官は9日の記者会見で「接種記録を後日まとめて入力する自治体もあり、公表日以前の接種回数も含まれる」と指摘。増加分が厳密には「1日100万回」を示す数字ではないと説明した。」ということで、「実際、官邸HPで8日の接種回数を見ると、医療従事者と高齢者の合計は約64万回にとどまる。」だったようです。つまり、集計がそのまま前日の接種回数ではないことを理解していなかったため、勇み足の発言になったようです。しかし、これはとても不思議な気がしました。その理由は・・・まずは、首相官邸のホームページに掲載されている高齢者の毎日の接種件数についてのグラフをご覧ください。

新型コロナワクチンについて | 首相官邸ホームページ (kantei.go.jp)

高齢者向けの接種はこれまで1回も60万回を超えたことはありませんでした。これに医療従事者向けの接種を合わせたグラフを作成してみました。

医療従事者と高齢者をあわせても、これまでの最も接種回数が多かったのは6月2日の84万6千回あまりでした。6月に入ってからの平均も医療従事者と高齢者の合計で70万回前後といったところで、一昨日前日に急激に増える特別な事情があったわけでもありません。

菅総理の発言が不思議だと言った理由は、首相官邸のホームページに掲載されているデータがちゃんと報告されていればこのようなことは起きないはずだと思うからです。日々のワクチン情報は一体どんな形で総理に報告されているのでしょうか?大変心配になります。結果として国会で誤ったことを伝えたことはどうなるのでしょうか?

ところで、本題に戻って1日100万人接種するのには、何人の医師と看護師が必要になるのでしょうか?今話題になっている職域接種に関する厚生労働省のサイトに、興味深い資料がありましたので、それを使って計算してみます。この職域接種については、必要な医療スタッフは、申請者が用意する必要があります。そこで厚労省のサイトでは、どのくらいの規模の接種にはどのくらいの医療スタッフが必要なのかを示す資料が用意されています。それが以下です。

https://www.mhlw.go.jp/content/000789163.pdf

これによれば、1日400人接種するとして、医師2名、看護師6名が必要であるとしています。この人数を用いて100万人分を計算すると医師は5,000人、看護師は15,000人必要となります。なんだか思ったよりも少ない気がしませんか?

しかし、医療のひっ迫が言われている中でこの医師5,000人、看護師15,000人という人間は確保できるのでしょうか?ということで、全国の免許をもつ医療スタッフの数を調べてみました。

医師は32万7千人、歯科医師は10万4千人、看護師は121万9千人いるようです。このワクチン接種は医療従事者に対して先行して行われましたが、その数は約480万人程度でした。そうしてみると医師看護師といた有資格者の数に対し倍以上のスタッフが医療従事者として働いていることがわかりました。

先ほどの100万回接種するのに必要な医師5000人、看護師15,000人という数字と上の表を見比べるとなんとかなるのではないかという印象を受けます。特に一番下の産業医です。これはもちろん、一番上の医師とダブっているのですが、実働している産業医は3万人程度と言われていますので、職域接種にあたっては、素人考えではこうした産業医の方々に動員をかけて実施していただけばよいのではないかと思ってしまいます。

この職域接種、被接種者を1000人以上集めることが条件になっています。医療スタッフの確保だけでなく、人数と場所の確保が必要であり、中小企業には高いハードルとなっています。基本的には中小企業は商工会議所を通じての共同接種が基本のようですが、商工会議所の対応も地域によってばらばらのようです。もう少しきめ細かな支援策を講じてほしいものだと思っています。