日系自動車メーカー4月の生産台数、前年同月比超大幅増加だが、台数は前月より減少

5月28日に自動車メーカー各社から一斉に4月の生産台数が発表になりました。これに対する報道各社の見出しを列挙してみます。

乗用車大手8社、4月の国内生産6割増 トヨタの世界販売最高(時事通信社)

自動車8社の世界生産2・3倍 4月、前年コロナの反動(産経新聞社)

自動車8社の世界生産、2・3倍 4月、コロナで前年激減の反動(中日新聞社)

車8社、4月の世界生産126%増(朝日新聞社)

これだけでもおおよそのことはわかります。国内の生産は前年同期の1.6倍、世界生産は2.3倍だが、これは昨年4月がコロナによって壊滅的な生産減だったためであるというのが概要です。これを頭においてもらい各社の国内・・世界の生産台数と前年同月比の推移を見てみましょう。ピンク色の楕円の部分2021年4月です。

これはいつものグラフで、縦軸の数値はこれまでとあえて変えませんでした。その結果、実は4月の前年同月比はかなりの会社がこのグラフには収まらないほど高い数字でした。後でグラフをお見せしますが、それほど大きな数字でした。ところが生産台数そのものはすべて前月からダウンしているのです。コロナだけでなく、半導体不足の問題もあるのでしょうが、とにかく生産台数そのものは減っています。にもかかわらず前年同月比が大幅増というのは、各社の見出しの中でも指摘されているように、前年同月(2020年4月)がとんでもないほどの減産に追い込まれたからです。この4月は台数減なのに、前年同月比が大幅増という異常な事態になっているのです。これはすべてのメーカーに共通しています。以下をご覧ください。

スバルもマツダも三菱もすべて、台数減で前年同月比大幅増になっています。台数と前年同月比が正反対の挙動を示しているということです。

ダイハツもスズキも同様です。平常時であれば、台数と前年同月比は同様な傾向を示すことが多いのですが、コロナ禍のような非常事態の中では、前年同月比の数値が意味をもたなくなっています。それではどうしたらよいのでしょうか?気象の世界では平年比が使われています。これは過去30年間の平均と比べてどうかという数字です。しかし、工業生産の場合、特に自動車の生産について、果たして過去30年の平均が最も適切な基準たるのかについては議論のあるところでしょう。そこでここでは、最も簡便に前々年比を計算して比べることにします。3月も前年比と前々年比を比較しましたが、それほど大きな差にはなっていませんでした。ところが4月はとんでもない差になっていました。下のグラフをご覧ください。

ご覧のように前年同月比が大幅プラスでも、前々年同月比になると実は100に届かないケースの方が多かったのです。特にスバルとマツダは前々年同月比では大きく落ち込んでおり、中でも海外はいずれも50前後ときわめて厳しい数字になっています。前々年比が意味をもつための前提条件としては、2019年がある意味普通の年だったということが必要ですが、まあ許容範囲と言ってよいと思います。

日塗工の業況観測アンケートにおける自動車用塗料の前々年同期比は100をわずかに超えていましたが、今回の生産台数の前々年同期比を見ると、実際にはもう少し厳しかったのではないかと懸念されます。これから5月6月と続いていきますが、いずれも落ち込みの大きかった時期であり、正しい状況理解のためには前年同月だけでなく、前々年同月との比較が最低限必要だと思われます。