モデルナとファイザーはとてもよく似ていました

今週の月曜日にファイザーのワクチンの化学組成をご紹介しましたが、実はモデルナのワクチンについても化学組成が公開されていました。検索したところ、いとも簡単にわかったのですが、掲載されていた場所がなんとウイキペディアでした。今日は、モデルナ社のワクチンの化学組成についてご紹介します。一言で言えば、ファイザー社のワクチンとほぼ同じであり、そのまま今日の表題にしました。まずは化学組成表からご覧ください。

ファイザー社と同じmRNAタイプのワクチンですので、mRNAと脂質、輸液成分という構成はもちろん同じなのですが、4つの脂質成分のうちコレステロールとDSPCは同じで、赤線枠で囲ったあとの二つの物質(SM-102とポリエチレングリコール・・)もこれから説明するように酷似していました。

輸液成分は、違っていますが、電解質+糖という意味では同じ範疇かと思います。このうちトロメタミンおよびその塩酸塩は、緩衝液成分として注射液に用いられているようです。

このmRNAタイプのワクチンについては、主成分であるmRNAはコロナウイルスのスパイクタンパクですから同じものになるわけで、ワクチンとしての成否を担うのは、どうも脂質の部分であり、このスパイクタンパクのmRNAが細胞内にうまく取り込まれるかどうかが鍵になるのではないかというのが私の推測です。となるとこの脂質部分が技術の肝(きも)であり、最も重要な部分と言えるのではないかと思います。そこでモデルナの脂質部分について、ファイザーと比較することにしました。コレステロールとDSPCは両方のワクチンに共通していますので残りの2物質どうしを比較してみました。

まずひとつめは、モデルナのSM102とファイザーのALC0315です。記述されていた名前だけみるとわかりませんが構造式を一目みると似ていることがわかります。そこで比較しやすいように書き直してみました。とても良く似ているのが判ると思います。違いは①エステル結合の方向(紫字)、②アルキル基、アルキレン基の炭素数(青字)です。青字部分の違いは炭素数1-2個の違いがほとんどであり、分子構成の骨組みとしては同じものであろうと推測できます。二つ目についても同様です。

二つ目は、モデルナのポリエチレングリコール・・・とファイザーのALC0159です。これも名前からではなかなか想像がつきませんが、構造式を見ると類似性がわかります。両方ともPEG2000の親水性部分と長鎖アルキル基の疎水性部分をもっており、親水性部分(ともにPEG2000)と疎水性部分(ともに炭素数14)の長さが同じです。親水性部分と疎水性部分を結合する部分は、モデルナがグリセリンとのエステル、エーテル結合、ファイザーがヒドロキシ酢酸とのアミド結合である点は異なっていますが、基本的な概念には共通点を感じます。

私は医学のことはわかりませんので、こうした微妙な差異がどのようにワクチンの効能に影響するのかコメントすることはできませんが、化学に携わるものとしては、特許の観点から非常に興味があります。通常特許を出願する際には、製品化可能な領域はできるだけ広く請求項に盛り込むからです。すなわち他社に簡単に真似されないようにピンポイントではなく、広い範囲を特許でカバーしてしまうのが通例であるということです。

これまで多くの特許を見てきた経験から言えば、二つ目の物質はともかく、一つ目の物質については、両社が特許を出願していれば、ほとんどの場合お互いに請求項の範囲に含まれてしまうのではないかと思われるからです。これを検証するには、お互いの特許を精査する必要があり、とても手にあまりますので、これ以上言及しませんが、化学的な立場から見れば、これだけ似たような化学組成であれば、ワクチンとしての効能も似たようなものであっても当然ではないかと思うということは申し上げたいと思います。

諸外国の例を見ればワクチンの接種が、感染拡大の抑制に効果があることは間違いありません。しなしながら、ワクチンの安全性に懸念を持つ人も少なからずいるようですので、ただ単に安全ですというだけでなく、どうして安全であると言えるのかをもう少し丁寧に説明すべきだと思います。医学の素人がワクチンの組成について書いているのもそうした思いからです。