二重変異種B.1.617について

先週加藤官房長官が、インドなどで発見されている二重変異種が日本でも6例発見されたと発表しました。空港のチェックで5例、国内感染者が1例であり、感染力が強いらしいとのことでしたが、それ以上の詳しいことは報道もされていないようなので、調べてわかったことをご紹介します。

二重変異種とは、二カ所で変異が起きているという意味であり、これまでの南アフリカ種やブラジル種と呼ばれているものも二重変異種ですので、これ自体が新しいということではありません。ただし、変異の起こっている場所や変異の仕方からみて、感染力が強く、かつ免疫を避ける能力が優れていると見られているようです。今回の内容は英語版のウイキペディア4月24日版からご紹介します。

https://en.wikipedia.org/wiki/Lineage_B.1.617

今回のこの変異種は、全体では15カ所のアミノ酸が入れ替わっていますが、ワクチンの効果に重大な影響を与えるスパイクタンパクについては少なくとも2カ所の置換が確認されています。

一つ目はE484Qです。どこかで聞いたことがある記号です。そうです、ことしの2月以降国内とくに東京で発見される確率が高かった変異種がE484Kという名前でした。同じ484番目のグルタミン酸が他のアミノ酸に置換されたもので、E484Kの場合にはリシン(リジン)に置換されましたが、E484Qではグルタミンに置換されています。

もう一つの変異はL452Rでスパイクタンパクの452番目のアミノ酸が、ロイシンからアルギニンに置換されています。この両方の箇所484番目と452番目は、置換がよく起きる場所ではありますが、両方が置換されることは珍しいと解説されています。この二重置換ですが、それぞれについてスパイクタンパクの受容体であるACE2に対するより親和性や結合能力が強く、免疫系を回避する能力に優れるとされていることが、この変異種が警戒されている理由です。

実はこの変異種はスパイクタンパクにおいてもう1カ所の変異が確認されています。

この3番目の変異は、P681Rであり、681番目のアミノ酸がプロリンからアルギニンに置換されています。これら3つの置換をみると、いずれも酸または非官能性部位がアミノ基を持った部位に置換されています。おそらく受容体との親和性や結合力の変化や免疫逃避性の増強はこのアミノ基への置換と関係があると想像されます。

実はこの変異種、4月24日現在で世界で870-1272例(集計者によって異なる)が確認されているに過ぎないのですが、先に述べた変異の仕方が、より感染力が強くワクチンや過去の抗体による免疫が効かなくなる方向への変異であるために懸念されているのです。

ウイルスは変異するものであり、既存のワクチンの効果が薄れていくということは覚悟しなければならないとしても、まだ従来型のワクチンの接種もままならない国の住民としては、なんともやりきれない気持ちになります。すでに変異種をターゲットにしたワクチン開発が始まっているとは思いますが、しばらくの間は変異とワクチン開発の競争が続くことを覚悟する必要がありそうです。