Go Toトラベル利用者の方が、新型コロナウイルス感染症を示唆する症状をより多く経験している

このショッキングなタイトルは、12月6日付で「医療政策学×医療経済学」に投稿されたプレプリント(査読前の非公式論文)のタイトルで、翌日ニュースなどで紹介された「東大などの研究チームが、GO TOトラベル利用者の方が利用しない人に比べコロナ症状の現れる確率が高いと発表した」のニュースソースです。今日はこの研究内容についてご紹介します。(以下のサイトから引用)

Go Toトラベル利用者の方が、新型コロナウイルス感染症を示唆する症状をより多く経験していることが明らかに – 医療政策学×医療経済学 (healthpolicyhealthecon.com)

まずこの研究チームの構成は、「宮脇敦士(東京大学大学院医学系研究科)、田淵貴大(大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部)、遠又靖丈(神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科)、津川友介(カリフォルニア大学ロサンゼルス校[UCLA])」の4名です。※ブロック体字は引用部分です。

調査方法は「15−79歳を対象とした大規模なインターネット調査(2020年8月末〜9月末に実施)によって集められてデータの解析」であり、25,482人が調査対象であり、

GO TOトラベルの利用経験(過去1−2ヶ月以内の利用の有無)と、過去1ヶ月以内に新型コロナを示唆する5つの症状(①発熱、②咽頭痛、③咳、④頭痛、⑤嗅覚/味覚異常)を経験していた人の割合との関連を調べた」ものです。

図1 Go To トラベル利用の有無別の新型コロナを示唆する5つの症状の有症率

Go To トラベルの利用経験のある人は、利用経験のない人に比べて、

過去1ヶ月以内に発熱(Go Toトラベル利用者4.8% vs. 非利用者3.7%; オッズ比 1.9)、

咽頭痛 (20.0% vs. 11.3%; オッズ比 2.1)、

咳 (19.2% vs. 11.2%; オッズ比 2.0)、

頭痛(29.4% vs. 25.5%; オッズ比 1.3)、

嗅覚/味覚異常 (2.6% vs. 1.7%; オッズ比 2.0)

を、より多く認めていたことがわかりました。この結果は、Go To トラベル事業の利用者は非利用者よりも新型コロナに感染するリスクが高いことを示しており、Go To トラベル事業が新型コロナ感染拡大に寄与している可能性があることを示唆しています。」

ここでオッズ比という言葉が出てきます。オッズというのは、この場合には症状の現れる確率をpとすれば、p/(1-p)で定義されます。オッズ比とはそれぞれのオッズの比になりますので、①を例にとれば、

オッズ比=( 0.20/(1-0.20))/((0.113)/(1-0.113))=(0.2/0.8)/(0.113/0.887)=0.25/0.127=1.97となります。なぜここで単なる確率ではなくオッズが使用されているのかまでは不明ですが、あまり気にせず読み飛ばしてください。

また年齢についても65歳未満(19,174名)と65歳以上(6,308名)で比較しており、「Go To トラベルの利用経験による有症率の違いは、65歳以上の高齢者よりも、65歳未満の非高齢者で顕著」としています。これについては、「この結果は、高齢者の方が新型コロナ感染を恐れているため、たとえ旅行をしても慎重に行動し、その結果として感染リスクを増加させていなかった可能性を示唆しています。」と解析しています。(下図)

年齢による症状への影響

確かに、症状の現れる頻度は65歳以上の方が低いようです。

さらに過体重・高血圧・糖尿病・心疾患・脳卒中・COPD・がんのうち少なくとも1つを持つか否かで区分けした基礎疾患の有無の影響については、「基礎疾患の有無によって、Go Toトラベル利用と有症率との関係は変わらない」としています。(基礎疾患有:12,733名、基礎疾患無し:12,749名)

基礎疾患の有無による症状への影響

この図と上の結論はしっくりきません。頭痛を除き、基礎疾患有の方が無にくらべて症状の現れる割合が明らかに高いと思いますが・・

こうした結果の限界点(どこまで結論づけられるか)として以下のように述べています。

Go To トラベルの利用が直接的に新型コロナ症状の増加につながったという因果関係は断定できない、

Go To トラベルの利用と新型コロナ症状の発生率との間の時系列的関係が不明、

新型コロナ症状を持つ人が、必ずしも新型コロナに感染しているわけではない、

新型コロナ症状を持つ人が、その原因としてGo To トラベルの利用を思い出しやすい可能性(思い出しバイアス)

等が挙げられます。

結局結論としては、今日のタイトルである「Go Toトラベル利用者の方が、新型コロナウイルス感染症を示唆する症状をより多く経験している」くらいのことになってしまうようです。常識的に考えて、GO TOトラベル利用中の感染確率が一般の生活における感染確率よりも低いとは考えられませんが、十分に対策しているので大丈夫などという無責任で安易な考え方に警鐘を鳴らす程度の効果はあるのではないかと思います。