ワクチンの有効性を計算してみました

今週初めファイザー、モデルナの2社が相次いでワクチンの治験結果を発表し、アメリカ国内では早ければ年内に接種が開始されるとの報道がありました。心配される安全性についても、重篤な副作用は見られなかったとしていますが、今日は両社が主張する有効性について、報道情報をもとに試算した結果をご紹介したいと思います。

発表はファイザーの方が早かったのですが、総感染者数だけで内訳を明確にしていませんでした。直後にモデルナがほぼ同様な優れた予防効果を感染者の内訳付きで発表したため、ファイザーが追加で2回目の発表を行い、1回目の結果よりも長期間の結果を発表しています。この結果、モデルナの発表内容とファイザーの2回目の発表内容はとても似ており、ワクチンの有効性については甲乙つけがたいところでした。そこで、効果の目安となる有効性について自分でも確認してみるべく、以下に詳しくそれぞれに試算してみたいと思います。まずはモデルナからです。

モデルナの治験結果は「治験者30000人に対し、半数ずつワクチンと偽薬(プラセボ)を投与したところ、ワクチン投与者に5名、偽薬投与者に90名の感染者が出た。また重症者11名はすべて偽薬投与者であった」というものです。このときのワクチンの効果がない場合の感染率は、偽薬投与者の感染率と同じですから0.60%と見積もることができます。

ワクチン投与者の中でも感染者が5名出ましたが、その背後には、ワクチンの効果がなかったにも拘らず感染しなかった人たちがいるはずですので、感染した人も含めてワクチンの効果がなかった人全体を見積もる必要があります。このワクチンの効果がなかった人全体(感染者+非感染者)は、偽薬投与者の感染率を使って求められ、833人と計算されます。

ワクチン投与にもかかわらず効果がなかった人は833と推定されましたので、ワクチンの効果が認めらたと考えられる人はワクチン投与者から833人を差し引いた14167人と推定され、これを母数の15000で割って94.4%と言う数字がでました。これがモデルナワクチンの有効率です。

同様にしてファイザーも計算してみます。

ファイザーの場合には、治験者の数はわかっていますが、ワクチン投与者の数が発表されていません。計算上ワクチン投与者と偽薬投与者が半数ずつと仮定しました。感染者数は、偽薬投与者の中から162名、ワクチン投与者の中から8名でした。モデルナと同様に計算すると、ワクチンの有効性は95.0%と計算されました。感染率は0.75%とモデルナの場合よりやや高い数値ですが、治験の期間がわかりませんので比較はできません。いずれにしても、両者とも十分な有効性があることはおわかりいただけたと思います。

アメリカでは、両社のワクチンとも認可されるであろうとの報道のようですが、両社のワクチンについては、同じRNAワクチンでありながら違う点もあります。それは貯蔵安定性です。モデルナのワクチンの有効貯蔵期間が通常の冷蔵庫温度で30日間、-20℃で6か月間であるのに対し、ファイザーのワクチンのそれは、-70℃以下で10日間と極めて短いのです。実際に使用することを考えれば、ファイザーのワクチンは極めて扱いが難しいワクチンであるということになります。

これら治験結果は、日本で行われた結果ではありませんので、安全性や有効性に対する懸念がすべて払拭されたわけではないと思いますが、これまで使用された実績のないRNAワクチンがかくも見事な治験結果を示していることに対しては、驚嘆とともに賞賛を送りたいと思います。ただしトランプ大統領にではなく、開発に携わったすべての人たちに。