中小企業ほど景気が悪い・・は本当か? 続き

昨日、内閣府が実施している「法人企業景気予測調査」のBSI値の推移から、掲題の「中小企業ほど景気が悪い」を検証し、確かに大企業に比べると全般に景況感は大きくマイナス方向に振れており、この15年間を見れば、自社の景況感に関しては、プラスになったのはわずか1.5%、国内景況感に関しても10.6%しかないことがわかりました。そこで気になったのは、他の調査ではどうなのかということで、今日は日銀短観のDI値の推移を見てみることにします。

内閣府の「法人企業景気予測調査」は、過去の一連のデータが表として掲載されているので、それをグラフ化するだけでよかったのですが、日銀短観はそうした過去データの一覧表が掲載されていませんので、時系列データを追いかけて数字を拾う作業が必要でした。日銀短観に限らず、公的調査は単年度データで掲載されているケースが多く、基本は前年度、前年同期あるいは前期との比較が中心です。もちろんそれも大事ではありますが、やはり長期的にみてどうかという視点で常に見ておくことも必要なのではないかと思います。

話が横道にそれましたが、日銀短観の2004年から2020年までの67四半期の企業規模別業況感の推移は下のグラフのようになりました。

いかがでしょうか?基本的な形は昨日の「景気予測調査」と同じであり、規模別格差も厳然として認められます。少し違っているのは、全体的なDI値のポジションであり、昨日のBSI値と比べて高い位置にあります。

今のことをもう少し具体的に数値で表現すると、この15年間DI値の平均は大企業が8.30,中堅企業が1.27、そして中小企業が -7.61でした。大企業と中小企業では約16ポイントの差があります。また、DI値がプラスであった期間の割合は、大企業が82.1%、中堅企業が65.7%、中小企業が38.8%でした。DI値がプラスであった期間の割合は、「法人企業景気予測調査に比べてかなり高くなっています。

これを昨日のグラフと比べてみましょう。

法人企業景気予測調査におけるBSI値推移

「法人企業景気予測調査」における中小企業のBSI値はほとんどがマイナスであり、プラスに転じたのは、「自社」が1.5%、「国内」が10.6%であったことは冒頭で書きました。同じような調査をしていてなぜこれほどプラスの期間の割合が違うのでしょうか?二つほど思い当たることがあります。

一つは設問の内容です。「法人企業景気予測調査」において、BSI値は、(前期に比べて「良い」-「悪い」)でした。一方日銀短観では、DI値は、(業況が「良い」-「悪い」)ですが、どんな基準で判断を求めているかについては、「回答企業の収益を中心とした業況についての全般的な判断」とされており、前期や前年との比較ではありません。つまり、BSI値は前期に比べて良くなっているか?という質問であり、DI値は自社の収益性からみて全般の景況は良いか?という質問である、ということになります。さらに言えば、「景気が良くなっているとは思わないが、自社の収益性が悪くなっているわけはない」と感じている経営者がある程度存在しているということを示唆しているのではないでしょうか?

二つ目はもう少し単純な理由です。それは調査の中手企業の対象範囲が異なっており、日銀短観は資本金が2000万円以上の企業が対象であるのに対し、「法人企業景気予測調査」は資本金が1000万円以上の企業が対象であり、資本金が1000万円~2000万円までの会社も約2100社含まれています。

「法人企業景気予測調査」においては、中小企業が資本金額に従ってさらに3つに区分されていますが、その内訳まではわかりません。ただ、日銀短観の調査対象範囲に比べてより小さな企業まで調査していることは間違いありません。

これまで見てきたように、日銀短観のDI値の方が「法人企業景気予測調査」のBSI値に比べてかなり高い数値が出ていることについて考察してみました。しかし本題の、「中小企業の方が景気が悪い・・は本当か?」ということについては、両者とも傾向は同じで中小企業の方が景気が悪いと回答した人が多いと言うことは共通しています。このことが、日本の社会ではあまり違和感なく受け入れられているようですが、本当にそれは「当たり前」のことなのでしょうか?