東京都感染者、重症者数の不思議

本日も東京都の新規感染者は360人台と発表されました。ますます感染が拡大しているようで、大変に心配しています。最近は、こうした感染拡大が全国的規模で見られており、医療の逼迫が強く懸念されます。中でも重症者は、大掛かりな治療体制が必要であり、東京でも確保できている重症者用ベッドは100床しかありません。この調子で増え続ければたちまちに逼迫するのではないかと心配しています。今日はこの重症者数について感じていることを書いてみます。

タイトルに「重症者数の不思議」とつけましたが、感じていることとはまさになぜ新規感染者がこれだけ増えているのに、重症者数はそれほど増えないのであろうかということです。この疑問に対する説明はおおかたこんな感じでした。「重症化するには時間がかかるので後から増えてくる。また今回は感染者に若いひとが多く、いまのところ軽症や無症状の割合が高いが、やがて高齢者の割合が増えていくと重症者も増えていく。」この説明に異議を唱えるわけではないのですが、6月20日以降感染者がどんどん増えていく割には、重症者の増加は緩やかな気がしています。そこで調べられる範囲でこの疑問に迫ってみようと思います。

まず、PCR検査の実態はどうか調べてみました。幸い東京都のデータベースには毎日のPCR検査の件数と陽性者の数が載っていますので、すぐにグラフ化できます。

上の図は東京都のPCR検査の検査数と陽性率の推移です。4月には少なかった件数が5月以降どんどん増えているのがわかると思います。月平均で言えば4月が一日平均303件に対し、7月は2811件と約10倍に増えました。また陽性率は、4月の平均が19.6%だったのに対し、7月は平均で6.3%です。4月時点では、PCR検査が十分にできていなかったため、非常に高い陽性率であり、このことは多くの軽症者や無症状者を検出することができなかったことを意味します。つまり今のような検査体制であれば、もっと感染者は増えていたことは間違いありません。

次に、新規感染者数と重症者の推移を見てみます。

重症者数の統計は4月27日以降しかありませんが、ちょうどこのころが重症者数のピークだったようで、4月28,29の両日に105人の最多数を記録しています。で、この図をみると大変心配になります。新規感染者がせいぜい100人台だった4月でも重症者が100人を超えたのだから、300人を越えるこの頃では重症者も300人以上になるのだはないかという心配が頭をもたげます。

4月の新規感染者は、一日の平均で125人でした。一方7月は一日の平均で193人であり、4月を大きく上回っています。ただし、4月のPCR検査の陽性率は7月の陽性率の3倍もあり、実際には125人の3倍ほど感染者がいたとしても不思議はないとも言えます。125人の3倍は375人で、193人の約2倍ですから、まだ現時点で重症者が4月に比べて少ないのも不思議ではないのかもしれません。(もちろん、これはあくまで例えの話であり科学的な根拠はありません)

重症者がまだ比較的少ないことについては、若い人が多いことの他に、治療の経験が蓄積されたため、重症化を未然に防げる割合が増えた、とか、ウイルスが変異を繰り返すうちに、より感染力が強く、重症化しない方向に変異したものが残っていくようになったのではないか、とか言われています。これらにコメントできる知識も能力もないのですが、グラフをいろいろ書いていると次のようなグラフができました。

これはPCR陽性率と重症者数の推移です。重症者数が、3週間から1月遅れで陽性率に追随しているように見えます。AIであれば、これを仮想事実としていろいろ考えるのでしょうが、さすがに直接的な因果関係を見出すには無理があります。強いて言えば、陽性率は一種の市中感染のパラメーターとも言えるので、市中感染が拡大すれば結果として重症者も増加するはずとくらいは言えるかもしれません。

年齢構成についてはやろうと思えば、東京都のデータベースからひとりひとりの感染者のデータを拾っていけばできないことはないのですが、1万人ものデータを拾うのはさすがに無理なので諦めました。まともな考察はここまでで、意味のあるような結論には至りませんでした。期待されていた方には申し訳ありません。ただ医療の要諦は、命を救うこと、それには生命の危険につながる重症者の十分な治療体制を確保すること、そのためには重症者数を増やさないことが大切であり、そうした意味で今後とも重症者数の推移に注目していきたいと思っています。