日本の気象変化・・・ 昨日、一昨日の続き

昨日で気温についてはそれなりに区切りをつけたつもりでしたが、あの後気になって、実際のエネルギー収支の計算に、どういった気象データが使用されているのか、(一社)日本塗料工業会の鈴木技術部長に教えてもらいました。省エネ計算に使用する気象データは、拡張アメダス気象データであり、10年毎の平均をとっているとのこと。現在使用されているデータは2011年に更新された2001-2010年のもので、今年過去10年間のデータが集計され、来年に新しいデータに更新されるということでした。最新のデータに更新されることで、少しでも高日射反射率塗料の使用による通年での省エネ効果が改善されることを祈ります。

また鈴木部長からは、例えば高日射反射率塗料の省エネ効果が、日本の中で最も不利と考えられる北海道地区でも、条件によってはプラスの省エネ効果が得られる事例を立証しようとしているとのことで、昨日書いた拡販への取り組みがされているのを聞いてうれしく思いました。

昨日、高日射反射率塗料の普及が頭打ちなのは、使用してくれる建築・建設業界の方々の同意が本当に得られていないからではないかと書きました。このことについてもう少し補足して説明します。

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以前、JIS K 5603:2017(塗膜の熱性能-熱流計測法による 日射吸収率の求め方)の制定当時、ほぼ原案ができあがった頃の話です。JISとして申請する際には、このJISの委員に加わっておられない建築関係の先生方に説明にいっておいた方がよいとのアドバイスをうけました。そして、そのアドバイスに従い、この高日射反射率塗料の省エネ効果について、最も多く論文を書いておられたある大学の先生を訪問したことがありました。

原案についての話が終わったあと帰り際に、この高日射反射率塗料の普及の話になったとき、先生が「省エネの基本は、新築の場合はあくまで断熱材であり、高日射反射率塗料は改修工事で断熱材が使用できないときや冷凍倉庫など特殊な場合に限定される」とはっきりと言われ、大変ショックを受けたのを思い出します。路面に高日射反射率塗料を塗装することで都市部のヒートアイランド現象を緩和できると何報も論文を書いていた先生ですらそのような認識をされていたようです。

そもそもJIS K 5603の話に戻れば、この規格が制定されるに至った理由のひとつが、言ったものがちの非科学的宣伝文句の氾濫でした。ひとつ例を挙げるならば、「塗る断熱材」です。建築で使用される断熱材の熱伝導率は空気のそれに近い数字であり、そうした低熱伝導材料をセンチメートル単位で使用しています。一方、塗料は、たとえ中空微粒子を含有していたとしても、その熱伝導率は断熱材には遠く及びません。さらに膜厚もどんなに頑張ってもミリ単位です。これで断熱材の代わりができるわけもないことは小学生でも理解できることです。しかし、実際には「塗る断熱材」およびそれに類似のキャッチコピーは、その当時横行していました。

あからさまには非難されることはなかったものの、塗料業界とはそうした非科学的な宣伝文句に対して見ても見ぬふりをし、コントロールしようとしない業界であるとの認識が建築業界に広まったように感じます。このJISの制定には、謳い文句がどうあろうとも、消費者が惑わされることがないように、問答無用で一律に塗料の熱性能を評価できる規格を作り、塗料業界としての姿勢をただすとともに、消費者の利益を守りたいという意図があったのです。

JIS K 5603の制定とそれを用いた新しい業界としての性能標準の制定により、塗料業界としての姿勢は示せたと考えています。次は、通年での省エネルギー問題です。現在、さまざまな地方自治体からこの高日射反射率塗料の使用に対して補助金制度が存在していますが、寒冷地の地方自治体の補助金制度はほとんどなく国の補助金制度もありません。これはひとえに、寒冷地では年間のエネルギー収支から見て、高日射反射率塗料の使用が省エネにはならないからです。

もちろん、国内の温暖地方さらには海外の熱帯気候では、年間のエネルギー収支は省エネになります。日塗工では、東南アジアの国々に日本の高日射反射率塗料の規格を広める取り組みやISOに高日射反射率塗料関係のJISを採用してもらうための取り組みを行っており、海外での普及のための活動も行っています。これはこれで素晴らしいことですが、国内市場の拡販において寒冷地での年間のエネルギー収支の問題は避けて通れない問題となっています。

昨日、十分な説明をしないまま気象データと高日射反射率塗料のかかわりについて書いてしまいましたが、実はこのような背景があったことをご理解いただきたく続編を書きました。

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寒冷地における通年でのエネルギー収支問題に対する技術的な最終回答は、サーモクロミック塗料、すなわち30℃以上では白っぽい色で、30℃以下では暗い色になるような塗料ではないかと思っています。もちろんそんなものは現在存在しませんし、開発まで時間がかかります。それまでの間どうするのか?皆で知恵を出して考えていくしかありません。幸い、日塗工では、従来の技術委員会の中の高日射反射率ワーキンググループに加え、建築塗料部会でもこの問題を取りあげて共同で検討していくということを聞きました。彼らの活動を注視していきたいと思います。