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かんとこうブログ

2020.05.25

フェルメールのアトリエ-その 1

先日の「フェルメールの青」では、ラピスラズリに焦点をあてて青顔料の歴史を紹介しました。 その中で「真珠の耳飾りの少女」のモデルが誰であるのか不明でありいろいろと憶測があることと、それを題材に小説が書かれ、映画化までされていると書きましたが、先日テレビ放映されたその映画を見る機会がありました。スカーレット・ヨハンソン演じるフェルメールの召使グリートも魅力的でしたが、それ以上に、映し出されたフェルメールのアトリエの様子、特に並んでいる絵の具の材料が興味をひきました。今日と明日の二日間はそのフェルメールが使っていた絵の具の材料について書きます。

少しだけ映画のストーリーを紹介します。デルフトのタイル絵師の娘であるグリートは、フェルメールの家で召使として働くことになります。アトリエを掃除するときに垣間見せたグリートの美術的センスにフェルメールが気付き、彼女に絵を描く手伝いを命じます。やがて、フェルメールは、妻の真珠の耳飾りをつけさせ、グリートをモデルとしてあの「真珠の耳飾りの少女」を描きたいと思うようになります。妻はフェルメールとグリートの関係を疑い、耳飾りを貸すことを拒否しますが、義母が取り計らい・・・というようなストーリーです。それはさておき、手伝いを命じたフェルメールはグリートをアトリエに連れていき、絵の具の材料を次のように説明していきます。 

「これはルビー色の樹脂、これはアラビアゴム、ワインの酒袋・・・これは緑青を作るのに使う。これは孔雀石、朱色、そして亜麻仁油」と説明していき、最初の仕事として、骨炭を磨り潰させ、亜麻仁油を加えて絵の具を作らせたのです。このフェルメールの説明の中に、私たちにもなじみのあるものがいくつか出てきました。アラビアゴムは水性絵の具のバインダーとして広く使用されているもの、緑青は銅の腐食生成物でありきれいな緑色をしています。ワインの酒袋については、おそらくすでにワインビネガーになってしまった古いワインを使って緑青を作っていたのではないかと想像できます。孔雀石はマラカイトと呼ばれるきれい緑色の石です。そして亜麻仁油はアルキド樹脂に使用される代表的な植物油で、適度な流動性と硬化性を持っています。さらにこうした顔料に亜麻仁油を加えて練っていくさまは、まさに塗料の世界における吸油量測定試験を思い出さずにはいられませんでした。


孔雀石(マラカイト) (中畑顕雅氏提供)

横浜のそごう美術館で開催された「フェルメール光の王国展2018」では、フェルメールが当時使用していた絵の具の材料が紹介されていました。それを下の表にまとめていく過程で、さらに有力な情報サイトが見つかり、フェルメールのパレットの色彩イメージを再現できました。ここに収録した顔料の一覧表とともにご覧ください。



この表に示した顔料については、もう少し詳しい説明を加えた表を用意しておりますが、ここから先は明日ご紹介することにします。

本項の作成にあたり、元関西ペイントの中畑顕雅氏より、資料の提供とアドバイスをいただきました。特に、教えていただいた下記の二つのサイトから、多くを引用させていただいています。

フェルメールのパレット 

http://www.essentialvermeer.com/palette/palette_vermeer’_palette.html

「絵画組成」の絵の具歴史

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