コロナショックの経済影響 塗料産業に与える影響

 昨日トヨタ自動車の決算発表があり、今年度の決算見通しについて、台数は世界で15%減、営業利益は80%減としていることを明らかにしました。そしてコロナショックのインパクトが赤字転落となったリーマンショック時を上回るものとしながらも、企業体質の強化により黒字は維持との表明でした。他の自動車メーカーでは、見通し立たずとしているところが多く、事態の深刻さが窺い知れます。

 さて、塗料需要の見通しですが、現時点において塗料に関する公式の統計は経済産業省の確報が2月まで、速報が3月までしかありません。3月度の速報では、前年同月比で溶剤型塗料の生産が-7.5%、出荷が-5.9%、水性塗料の生産が-7.5%、出荷が-6.7%でした。いずれもかなり大きなマイナスでしたが、4月はさらに前年同月比が落ち込むのではないかと懸念されています。塗料の場合には、幅広い産業で使用されていますので、その需要動向をみるには産業全般の動向をみていく必要があります。

 産業全般の動向をみるため、経済産業省の生産・出荷・在庫率速報 3月分を下に示します。出荷については、自動車を除く輸送機械分野を除きすべての分野で前年同期比マイナスでした。やはりコロナウイルスの影響が社会的にあらゆる分野に及んでいることがわかります。この先についても、多くの企業の決算発表で「合理的に予測することが不可能である」としていることから、見通すことは難しい状況にあります。ただ、ここまでいろいろ見てきた印象とすれば、このコロナショックは、リーマンショックよりも大きな爪痕を残す可能性があることは間違いなさそうに思えます。

 そこで、リーマンショック前後の塗料生産量、販売量、販売金額の月ごとの推移を調べてみました。2007年から2011年までの5年間の月間生産量の推移と前年同月比の推移を下のグラフに示します。結局、生産数量、出荷金額、販売金額はすべて同じ傾向でしたので、ここでは代表として生産数量のみ示します。

経済産業省 生産動態統計 年報 2007-2010年より作図

 左側のグラフは月間生産数量の推移ですが、この推移は、昨日のリーマンショック前後の自動車の国内生産台数の推移と似た傾向になりました。さらに言えば、当時の状況は産業の如何を問わず、一様であったと言えます。 生産量は、2008年9月15日のリーマンブラザースの破綻から間もなく、急激に減少し2009年の2月に底をうつものの、その後の回復の動きははかばかしくなく、結局2011年でもリーマンショック以前の水準には回復していません。2011年3月には、東日本大震災があり、その影響が3-5月に見て取れますが、リーマンショックに比べればはるかに軽微でした。塗料の月間生産量の平均値は、2008年から2009にかけて約20%減少しました。2010年、2011年の水準は、2008年に比べると約13%減少しています。

 右側のグラフは、生産量の前年同月比を表していますが、リーマンショック後1月後の2008年10月からマイナスに転じ、2009年2月に37%のマイナスを記録しました。その後回復していきますが、前年比プラスに転じるのは2009年の12月でした。前年同月比のマイナスは14か月間続いたことになります。ここで注意が必要なことは、2009年12月から前年比がプラスに転じていますが、その理由は、前年の値の落ち込みが大きかったため、相対的にプラスになったということであり、リーマンショック以前の水準に戻ったという意味ではないことです。さらに言えば、現在に至るまで、リーマンショック以前の水準に戻ることはなかったのです。

 日本の塗料生産量が、リーマンショックにより大きく下落し、なかなか回復しないことについては周知のところとなっています。この要因は、それまでの国内生産・輸出から海外の現地生産への移転が一挙に進んだためと説明されています。現時点で日本のGDPに占める輸出の割合は18.5%であり、世界的にみれば依存度は低い部類に属します。典型的な輸出大国ドイツ(46.9%)の半分以下であり、消費大国アメリカ(11.5%)に近い数字と言ってもいいほどです。コロナショックにより、リーマンショックのような海外への生産移転が起きるとは考えにくいところですが、それに代わる社会の変容、例えば、リモートワーク、WEB会議など仕事のやり方の変化は必ず起こってくるものと思われます。そうした変容を予測し、塗料産業としての備えを行うことも必要となるでしょう。

 ここまで見てきた限りにおいて、このコロナショックの影響が、リーマンショックを上回る可能性は否定できません。リーマンショックの塗料製造業への影響は、翌年の2009年だけみても生産量20%のマイナスでした。仮にコロナショックがこれを上回るとすれば、これからの1年は、とんでもなく大きな経済減速を覚悟しなければならないということになります。

 リーマンショックの時には、塗料需要の底はリーマンブラザースの破綻から4か月後でした。現在のコロナでは国内感染のピークがようやく過ぎようとしているタイミングに過ぎず、塗料需要の底はまだ先だと思われますので、情勢を注意深く見守る必要があります。

 昨日経済産業省のデータを見直していたら、化学工業統計年報のPDF版が1989年まで遡って閲覧できることがわかりました。明日は、バブル期前後の塗料需要動向がどうだったのかをご紹介します。