抗原検査について

今日から延長された緊急事態宣言期間が始まります。解除の基準が数値化されていないなどという批判もあるようですが、昨年の12月31日に初めて国際的に存在が認定されたウイルスでもあり、現時点で感染の状況を正確に把握するのは容易でないようです。当初はPCR一辺倒だった検査に、抗体検査が加わり、そして抗原検査という名前も聞かれるようになりました。今日はこの抗原検査について書きます。

PCR検査はすっかり有名になったのでもはや説明の必要はないかもしれませんが、Polymerase Chain Reactionの略称で、重合酵素(Polymerase)を使った連鎖反応(Chain Reaction)によって、ウイルス遺伝子の特徴的な部分を100万倍にも増幅して検出する方法です。新型コロナウイルスは、中心にあるRNAと周囲の殻の部分だけの構造なのでまさにウイルスそのものを検出する試験方法です。一般に、感度は70%、特異度は100%近いといわれています。ここで、感度とは、陽性を正しく陽性と判定できる確率、特異度とは、陰性を正しく陰性と判定できる確率です。この方法では、ウイルスからRNAを取り出し、それをDNAに逆転写して鋳型を作り、それから増幅します。機器も必要で手順も複雑であり、時間もかかります。

一方抗体検査は、ウイルスに感染した場合に、体の中に形成される抗体を検査する試験です。この抗体は2種類あり、素早く応答するIgMという抗体と、時間がたってから形成されるIgGという抗体があります。この検査は、イムノクロマト法と呼ばれる方法であり、簡単に言えば、試験キット上で病原(標識抗原)と免疫(抗原抗体)反応を起こさせ、それを検出するという方法です。この試験は、インフルエンザの試験と同じように行うことができるので、簡便でありその場で結果を見ることができます。ただし、感度はPCR検査よりも落ちると言われています。また、抗体が存在することは、過去に感染したことの証明にはなりますが、十分な免疫力があるかどうかの判定には使えません。なかなか進まないPCRを見て、感染の実態把握にこの抗体検査を実施すべきとの意見も出ています。

最後に今日の本題の抗原検査ですが、これは抗原、すなわちウイルスそのものの有無を検査するものです。方法としては、抗体検査と同じくイムノクロマト法ですが、抗原を検出するために、抗原と特異的に反応する抗体とキットの中で反応させそれを検出します。PCR検査が遺伝子そのものを検出するのに対し、抗原検査では、ウイルスの外側に付いている突起部分のたんぱく質を検出します。抗体検査と同じく、簡易で迅速に検査できますので、PCRを補完する検査として大いに期待されています。一般にPCR検査に比べて感度はおちると言われています。

この抗原検査に使用するキットですが、4月27日に富士レビオ株式会社(親会社:みらかホールディング株式会社)から、体外診断医薬品としての申請がなされました。詳しい検出機構については、プレス発表の中では触れられていませんが、この会社は、政府の肝いりで行われている「迅速診断キットの基盤的研究開発」に参画しています。

これ以外にも、抗原検査(キット)に関してはネット上で情報がいくつか見つかりました。九龍勞斯有限公司という香港の会社が、中国で実績のある検査キットを世界中で販売するという発表が4月13日に日本でもなされました。感度100%、特異度100%という触れ込みです。日本国内では、株式会社クロノス、株式会社沖縄物産総合交易とともに準備を進めていると発表されています。

また、3月9日には、横浜市立大学が、新型コロナウイルスを構成するヌクレオカプシドタンパク質に特異的に反応する抗体を見出したことを発表し、4月20日には、この抗体を使った抗原検査用の検査キットを5月中旬に関東化学株式会社から研究用試薬として販売予定であると発表しました。

抗原検査用の検査キットについては、富士レビオが一歩先んじた形ですが、複数の機関による開発競争が行われており、精度の向上と臨床試験の進展が大いに期待されています。

本項を書くにあたり以下のサイトを参考にしました。

https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP533533_Q0A430C2000000/

https://www.value-press.com/pressrelease/240047

https://www.sankeibiz.jp/business/news/200420/prl2004201714112-n1.htm